
仲本 理乃さん プロフィール
2015年に東京外国語大学英語科を卒業後、国際文化交流事業を行う政府系機関に新卒で入社し、8年間勤務。その後、通訳を目指すことを決意し、通訳学校に通いながらグローバル展開する日系大手アパレルメーカーで社内通訳として働き始める。2025年現在は、社内通訳としての業務を続ける一方で、単発の通訳案件もフリーランスとして受けている。
大きな希望を持って新卒入社した会社のお仕事が、思い描いていたものと違い悩んだ経験を持つ仲本さん。自分のやりたいことを一から考え直し通訳というお仕事に舵を切った経験についてお伺いしました。
「やりたいことがない」悩み続けた8年間
ー新卒入社した会社での経験について、教えてください。
海外経験や語学力を活かして人と人をつなげる仕事がしたい、国際文化交流に貢献したいという思いから、第一志望だった政府系機関に新卒で入職しました。ビジョンに共感し、事業にも大きな意義を感じていました。
しかし、自分の経験や語学力を十分に活かせる場面が少なく、働き方に違和感を覚えることが増え、「本当にやりたいことはこれなのか」と悩むようになりました。部署を異動しても「これだ」と思える仕事には出会えず、迷いを抱えたまま8年間が過ぎてしまいました。
ー期待が大きかった分、よりギャップを感じますよね。キャリアチェンジに至るまでの過程について教えて頂けますか。
最初は「これが自分のやりたかったことのはずだ」と思い込み、職場にこだわっていました。新卒で入社した会社であることや、事業内容に共感できたこと、安定した環境であることから、別の道を考える発想自体がありませんでした。しかし、違和感を抱えながら働き続け、仕事にやりがいを見いだせない自分に嫌気が差し、友人に相談するようになりました。そのとき友人から「これならやってみたいと思える仕事はないの?」と聞かれ、ふと頭に浮かんだのが通訳という仕事でした。
わくわくした体験を振り返りたどり着いた選択肢
ー「通訳のお仕事」は突然の選択肢でしたか?それともずっと前から心のどこかにあったのでしょうか。
大学時代、語学や通訳の授業は好きでしたが、それを仕事にするという発想はありませんでした。キャリアに迷っている中で、「自分が好きなことは何だろう」「得意なことは何だろう」と考え、語学を学んでいたときのわくわくした気持ちを思い出しました。また、高校時代、海外からの訪問団が学校に来たとき、副校長先生のスピーチを通訳した経験がとても楽しかったことも思い出しました。実は、ずっと心の中で通訳という仕事に興味を持っていたのだと思います。それらのことを振り返り、少しずつ行動を起こし始めました。
ー通訳を目指そうと思い始めてから、どんな行動をとりましたか。
通訳をしている方に話を聞き、仕事内容や必要なスキルについて詳しく調べました。通訳と翻訳の違いや、社内通訳や会議通訳の違いなどについても深く掘り下げていきました。また、調べる中で、語学力だけでなく、理解力や内容をわかりやすく伝える技術、幅広い知識が必要だとわかりました。そのため、通訳スクールに通う必要があると感じ、いくつかの学校を見学して、自分に合った学校を決めました。情報を自分で集め、行動する中で、足りない部分や今後取り組むべきことがより明確になりました。
「努力が楽しい」と思えるように
ー通訳スクールで通訳訓練を受けてみてどうでしたか。通訳の仕事をしたいという気持ちは強くなりましたか。
自分の英語力や知識不足を痛感し、もっと勉強しなければならないと強く感じました。通訳スクールの先生やクラスメイトから刺激を受ける中で、「もっと通訳が上手くなりたい」という気持ちが芽生え、毎日勉強に励むようになりました。努力すること自体が楽しいと感じるようになり、勉強を続けるうちに、実際に通訳の仕事に挑戦したいという思いがどんどん強くなりました。もちろん、学校での勉強も大切ですが、実際に現場で経験することで学べることも多いのではないかと考えるようになりました。

試してわかった「自分の肌に合う仕事」
ースクールに通いながら、通訳として最初のお仕事に就かれたということですが、通訳として最初のお仕事はいかがでしたか。
緊張や不安もありましたが、それ以上に「実力を試してみたい!」という気持ちが強かったです。最初はうまくいかないことも多くありましたが、「次はできるように」と必死に勉強を続けました。通訳の仕事は成果がすぐに見えるため、努力次第でどんどん改善できる点が魅力です。この働き方が自分に合っていると感じました。
また、通訳は「引き出し」が多いほど役立つ仕事なので、知識や経験を増やしていく中で、自分自身の成長を実感できるのも大きな魅力です。自分の成長とともに育っていくような、自分らしい仕事だと感じています。また、専門性を活かして働ける点にとてもやりがいを感じています。未経験からのスタートだったため、最初の数年は前職より給与が下がっても仕方ないと思っていましたが、実際には収入が1.5倍ほどに上がりました。
今後の展望とメッセージ
ー今後のキャリアはどのように考えていますか。
通訳としてスキルを磨き、経験を積みながら、自分の専門分野を見つけていきたいと思っています。また、フリーランスとして仕事を獲得することにも力を入れたいです。フリーランスは仕事やスケジュールの管理が重要なので、家庭とのバランスを保ちながら取り組んでいきたいです。
ー「好きなこと」はどのように見つけたら良いか、アドバイス頂けますか?
とにかく書き出してみることをお勧めします。自分がどんな人間でありたいのか、どんな生活を送りたいのか。今の仕事ややりたい仕事のメリット・デメリット、これからの人生の年表などを書き出すと、自分の考えが整理されます。私も実際にやってみて、キャリアチェンジに挑戦するデメリットが意外と少ないことに気づきました。
また、これまでの人生を振り返りながら、得意だったことややってみて楽しかったことを思い出すことも大切です。具体的に考えてみることで、新しい気づきや方向性が見えてくると思います。