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#4 レコード会社PRから米粉クレープ店経営へ|自分の手で届ける価値


 

小林 聡子さん プロフィール

 2016年に東京外国語大学卒業後、レコード会社勤務にて営業、販促、宣伝等に従事。2021年に退職しキッチンカーで米粉製のクレープの販売を開始。経営からSNS発信まで一手に担い、個人事業主として活動中。


 「コバヤシクレープ」が人気となり、今では出店情報を頼りにコバヤシクレープをめがけてやってくるお客様がいたり、企業とのタイアップで撮影現場に出店することも。誠実で偽りのない性格が人の心をつかむ小林さんに、今に至るまでのお話をお伺いしました。

 

充実したレコード会社での経験

ー新卒でレコード会社へ入社した背景と、当時のお仕事内容を教えて頂けますか。

 元々バンドが好きだったこともあり、音楽に関わる仕事をしたいと学生時代から考えていました。就職後は営業・販促の部署を経て、その後自社マネジメントのバンドの宣伝を担当していました。めまぐるしいほど多忙な環境でしたが、自分が好きな業界で働くことは楽しかったです。CD販売店、サブスクリクションプラットフォーム、ライブ制作会社、各メディアの方々など、様々な業界の方とお仕事をさせていただけたことは大きな経験となりました。また、自身が好きなジャンルのみならず、クラシックや演歌などの幅広い音楽とそれに伴う多様なマーケティングを学ぶことができたと感じています。様々な部署での仕事を経験させていただけたことは、現在の仕事にも生かされていると感謝しています。


クレープ店開業の転換点

ーレコード会社を退職しキッチンカーでクレープ店を運営されたのは大きな転換点だったと思います。変化のきっかけについて教えてください。突然の決断だったか、もしくは長期的に考えていたことでしたか?

 転換の理由は二点ありました。まず、働き方や時間を自分で決められるような仕事がしたかったこと。そして、自分の手で何かを作り、それを目の前の人に届けたいという思いです。会社ではどうしてもPDCAに時間がかかってしまい、もどかしい思いをすることも多く、直接的な手応えを感じられる仕事のほうが充実した働き方になると考えました。コロナ禍で周囲の環境が大きく変わる中で将来を考える時間が増えたこともあり、数ヶ月間慎重に考えた末、思い切って退職を決意しました。

 キッチンカーのクレープ店という業態を選択したのは、クレープが好きだったことと、車で色々な場所へ行き営業ができることへの単純な憧れからでした。


都内各所へ出店するコバヤシクレープ
都内各所へ出店するコバヤシクレープ

ーそれまでの仕事とは全く違う業種への転換に葛藤はありましたか?

 大いにありました。「外大を出たのにクレープ?なぜ?」と言われることも多かったですし、私自身も今まで学んできたことや働いてきたことがリセットされてしまうことへの懸念や、「正社員」という保証がなくなることのリスクも考えました。ですが、自身の人生を考える中で「自分の好きを大切にすること」のプライオリティが高いことに気付き、決断することができました。これまでの経験が活かされる場面も多く、無駄なことは何もなかったのだと今では考えています。


ー会社を辞め、一から事業を始めるというのは大変なことも多いと思います。当時はどんな心境でしたか?

 開業前にクレープ店にてアルバイトをさせていただいておりましたが、ほとんど未経験の状態での開業だったため不安はありました。そのため、商品の研究や出店場所の選定、売上予測および費用等の試算に多くの時間をかけ、少しでも不安を払拭できるよう準備をしていました。また、自分ですべてを管理する必要があるため、漏れがないか常に気にしていました。運営許可の取得や衛生管理など、地味ながら重要な準備が多く、華やかなイメージとは異なる部分もありました。それでも、苦労して作ったクレープが喜ばれたときの達成感は大きかったです。


自分に合った働き方と前向きな関わり合いに魅力

―今の働き方について共有いただけますか?一日・一週間のスケジュール、業務範囲など。

 週に5日ほどイベントやマーケット、公園に出店しています。営業時間外は、スケジュール調整、仕入れ、メニュー改善、SNSでの情報発信を行っています。営業終了後には売上集計や翌日の仕込みもこなします。営業中に感じた反省点やお客様からのご意見、SNSで寄せられた投稿を確認して改善に活かしています。


季節限定も定番も、丁寧に考えられたメニュー
季節限定も定番も、丁寧に考えられたメニュー

ー今のお仕事について、満足している部分と、もしそうでない部分もあれば教えて頂きたいです。

 望んでいた小回りの利く働き方ができ、自分の好きな規模感やスピード感で進められる点に満足しています。店舗と違って色々な場所に行けるのも、自分には合っていると感じます。スケジュールを自分で決めることができるため、趣味の旅行に行きやすくなったことも嬉しいです(笑)

 なんといっても、小麦アレルギーの方に「クレープが食べられて嬉しい!」と喜んでいただいたり、お客様の笑顔や「美味しかった」「また来ました」という言葉が大きな励みになっています。

また、同業他社の方も自ら望んでこの仕事に就いている方が多く、前向きな雰囲気の方と触れ合う機会が多いのも魅力の一つだと思います。

 一方で、天候に左右されるため収入面の不安はありますがこの課題を受け入れつつ、対策を考えながら取り組んでいます。


今後とメッセージ

―今後のキャリアについて、今のお考えを教えて頂けますか。

 現在は一人で営業しており、ご依頼いただいてもスケジュールが合わず出店できないことが度々あるため、今後は人を増やして少し規模を拡大し、さらに多くの方に米粉クレープを届けていきたいと考えています。現在の仕事をずっと続けていけるかは分かりませんが、「自分の好きなことをする」というテーマは大切にしていきたいです。


ー小林さんは個人事業主として自分に合った働き方を実現され、自分の好きなものをお仕事にされています。同じことを目指す方に、アドバイスやメッセージがあればお願いします。

 個人事業主は自由度が高い分、その結果が全て自分に降りかかる責任もありますが、それも含めてやりがいのあることだと感じています。

 もし悩んでいる方がいたら、「現在の仕事を辞めたい(新しいことを始めたい)理由」と「現在の仕事を続けたい理由」を列挙してみると考えが整理できるのではないでしょうか。その天秤が傾いた方に進んでいけば、自分の納得できる人生を送れるのではないかと思います。



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